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Immigration Column

旅好きのご夫婦が「縁」あって富良野へ。移住先で叶えたマイホーム&ゲストハウス。

富良野市 マレットさん宅

設計監理/鈴木理アトリエ一級建築士事務所 取材・文/三枝史子

澄み渡る空気のなか、見渡す限り山々と田園風景に囲まれた雄大なロケーション。テラスからの眺めに心が洗われるよう

ピースフルで
美しい景観に魅せられ、
東京から移住。

広大な田園地帯の一角で目を引く建築は、1階に1日2組限定のゲストハウス、2階が住宅という建物です。オーナーはオーストラリア出身のニック・マレットさんとシンガポール出身のユージニアさんご夫婦。おふたりは勤務先の香港で出会い、その後、東京に仕事を得て7年間滞在。ともに旅が大好きで香港時代からよく日本を訪れ、とくに北海道は憧れの地だったといいます。澄んだ空気と大自然が織りなす景色はピースフルでビューティフル、とユージニアさん。「日本の田舎に住むのが私たちの夢でした。美瑛、東川、旭岳エリアとあちこち巡りましたが、なかでも富良野はスキーやラベンダー、ハイキングに温泉とアクティビティが豊富で、レストランや病院など生活圏にも近い。自然とコンビニエンスのバランスのよさが移住の決め手になりました」。

富良野でどんな仕事ができるだろうと考え、この環境を生かしたゲストハウスをつくろうと決めたのが2019年頃。ネットでこの土地を見つけ、雪に覆われた冬のある日、東京から視察に来ました。「大雪山が目の前に広がり、なんてすごいロケーションだと。私はラッキーガールだから、きっとここなら上手くいくと思ったの」。

建物は北海道の建築家に依頼したいと考えていたニックさんはリストをつくり、何人かとコンタクトを取った後、基本的な考え方が一致した札幌の設計事務所、鈴木理アトリエに依頼しました。「この景色をいかに魅力的に取り込むか、鈴木さんは私たちの思いをすぐに理解してくれました。寒さの克服など、開口部に対する考え方も信頼できました」。

大雪山連峰を背景に、畑の縁にポツンと立つマレット邸。自然に映える赤い建物は、素朴なつくりの農家の納屋をイメージしたもの
一直線に延びる階段は、ゲスト用ペンションと自宅を分けるオンとオフの切り替えスイッチの役割も
愛猫のゾイちゃんと秋田犬ジャックスも東京の家からお引っ越し。2人とも見晴らしのいいテラスのそばでくつろぐのが大好き
いろいろな景色を切り取って一枚の絵のように見せる窓の存在が空間を豊かに。季節によって表情を変える山の景色、種まきから収穫まで農作物が成長する様子を最前列で眺められるのがこの家の醍醐味

白い空間に映える、
窓辺の景色と
アジアンアンティーク。

テラスの正面に見える大雪山のみならず、スキー場や芦別岳、蛇行する川、遠くの斜面に広がるぶどう畑の眺めも美しいマレットさん宅。360度どこを見ても癒やされる風景を前に、設計を手がけた鈴木理さんは開口の取り方について話してくれたそうです。「これだけの環境を全面ガラス張りでいっぺんに見せてしまうより、ひとつの景色を切り取るように窓を設け、ダイニングやキッチン、ソファに座ったとき、それぞれの場で変化を味わえた方が楽しいのではと。冬の寒さが厳しいこともあり、閉じながらも開放的な空間づくりを目指しました」。

鈴木さんは、旭川に本社を置く橋本川島コーポレーション(HKハウス)へ施工を依頼。これまでにも幾度かタッグを組んだ実績があり、ビルダーとしての信頼感はもちろん富良野へのフットワークにも安心感を持っていました。施主は東京、建築家は札幌、施工者は旭川、そして現場は富良野という4拠点に分散したプロジェクトも、Zoomミーティングでじっくり対話を重ね、工事の進捗状況は写真を含む報告をメールで緻密にやり取りするなど、コミュニケーションにはまったく不安がなかったというニックさんとユージニアさん。強いていえば、小さなサンプルで色や質感を見極めるのが難しかったといいます。「実際に出来上がった壁を見て、ワォ!こんな白さだったのかと。でも結果的にとても気に入っているのでよかった」と、ニックさんは笑います。

お二人はアジアンアンティークの家具が好きで、新しい住まいに運び込まれたのも少しずつ買い集めて使っていたもの。オープンスタイルのシンプルな空間に、愛着あるモノたちが違和感なくなじみ、豊かな空気を醸し出しています。

リビングの延長に設けたテラスは絶景を映し出す特等席。ソファに深く座り薪ストーブの炎に癒やされながら窓辺の景色を眺めるのは、まさに極上のひととき
アンティークの家具の色調に合わせて、キッチンはグラフテクトの渋いブラウンをセレクト。背面に張った大判のタイルは薪ストーブの炉壁と同じもので統一
ポークチョップからチョコレートケーキまで、料理が得意というニックさん。忙しい毎日も、キッチン横の窓辺の風景に一瞬立ち止まり深呼吸

キッチンをフル装備。
愛犬と泊まれる
滞在型の宿「縁」。

1階は1日2組限定のゲストルーム「縁EN」のスペース。日本中、世界中を旅してきた国際色豊かなホストがほれ込んだ富良野で、集う人との出会いやつながりを大切にする気持ちと、ユージニア(Eugenia)さんとニック(Nick)さんの頭文字を合わせたものです。

ゲストルームは2タイプあり、ひとつはダブルベッドを備えたワンルームタイプの山吹Yamabuki、もうひとつが2ベッドルーム+LDKの茜Akane。いずれのタイプにもキッチンとバス・トイレが完備され、自炊をしながら暮らすような滞在が可能で、長期ステイにはぴったりです。アンティーク調の個性的な家具はネットを駆使して世界中から集めたものですが、なかなか現地に足を運べないニックさんご夫婦は、HKハウスの現場担当者に空間のサイズを図ってもらい、それをもとにひとつひとつの家具を購入。「担当の成田さんはとてもヘルプフルで、細かい相談にも丁寧に対応してくれたので助かりました」とユージニアさん。引き渡しと同時に東京の家を引き払い、富良野で完成した自宅とゲストルームを見たときには、嬉しさが込み上げたといいます。

これから迎えるゲストにはスキーをはじめとするアクティビティとともに、地元の食材やカフェ、ショップ情報などを積極的に伝え、富良野を好きになってもらいたいといいます。また、自分たちが旅するときにいつも苦労していた経験から、愛犬や愛猫と泊まれるペットフレンドリーな宿にしたのも縁の大きな特長。都会の喧騒から逃れウォーム&リラックス、元気をチャージしてもらうのが願いです。

1階 ゲストルーム

生活に必要な道具がすべて揃ったゲストルーム。調理器具やワイングラス、コーヒーメーカーまで完備され、窓の雄大な景色を堪能しながら滞在そのものを楽しめる。落ち着いた気分を誘う趣味のいいインテリアも魅力。写真右下が山吹、ほかは茜

Point 設計のポイント
●広大な田園地帯にすっくと立ち、それ自体が風景となるような建築を心がけた。
●シンプルな三角屋根に、緑の季節や白い季節にも引き立つバーガンディ(赤)の外壁。
●道路から半階ほど下がった敷地を生かし、2階テラスを2段にして庭とつながるように。
●360度の絶景を場所ごとに切り取る多彩な窓。冬の寒さに配慮し閉じながらも開放的に。
●オーナーの愛着ある家具が映える、白を基調とした三角天井のシンプルなインテリア。

HK House
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